アメリカ本部から届く世界のインストラクター向けニュースレター『EDU-K UPDATE』 11月号から、記事を抜粋して翻訳しました。
また9月号に発表された、教育キネシオロジーの創始者ポール・デニソン博士のメッセージも併せて掲載しましたのでご覧下さい。


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 EDU-K UPDATE 2008年11月号
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◆ブレインジムを学び・教えておられる皆さまへ
理事の一人として、今号のご挨拶を書くようにとお誘いを頂きました。私はリサーチ委員会に所属していますので、今回は「リサーチとブレインジム」に関する私の所見をお話ししたいと思います。

1999年のこと、私が小学校で生徒達と行っているブレインジムの記録をとっておくようにと勧めてくれる人がいました。ワシントン州のDoug Steenlandというブレインジム・インストラクターで、29歳の元体育の教員/コーチをしていた人です。彼の話によると、教員生活の終わり頃にブレインジムを使いはじめ、大勢の生徒達が学習と運動面の両方で成績を伸ばすようになったそうです。彼は教員をやめてブレインジムを学校に紹介しようと試みたところ、プログラムの有効性を示す調査報告を求められたそうです。当時はブレインジムに関する何の科学的調査も行われていませんでした。

Dougさんはこう言いました。「あなたはまだ学校というシステムの中にいます。だからあなたがなさっていることを記録して、それを私たちに共有させてください。」この時まで私はリサーチの経験がありませんでしたが、すぐにその方法を学ぶようになりました。幸い私の友人で、動きに関する調査研究を論文として相当数発表している人がいたのです。現在私は小中学生レベルを対象に様々なブレインジムのリサーチ調査を実施しつつ、その援助も行っています。そのうち2つの調査報告が、「ブレインジム・ジャーナル」の2004年11月号と2005年11号に掲載されました。

もし皆さんが一度でもブレインジムのリサーチを考えられたことがあるのなら、「とにかくやってみる」ことをお勧めします。学校側が一度前向きの成果を目にすれば、努力は非常に生産的な結果へと結びつき、学校管理者から本当の支援を得られるようになります。

ブレインジム・インターナショナルはリサーチ委員会であり、その主な使命はブレインジムの調査報告を収集し、その成果を利用できるようにすること、またこのような調査を行いたいと思っている人達を勇気づけて支援することです。現況においては、教育キネシオロジーの分野における注釈付きの研究レポート概要のアップデートを行っているところです。この資料は以下のホームページ・アドレスからダウンロードすることができます。
http://www.braingym.org/research

心をこめて、
Thad Trahan
ブレインジム・インターナショナル理事
リサーチ委員会代表



◆今月の「この人」 イスラエルのファカルティ、Jeanette Primostさん
Jeanette Primostさんは、どんな人にも生来の治癒力があると信じています。必要な時にいつでもこのような自然治癒力と結びつく能力、可能なかぎり心と身体と精神のバランスがとれた状態を望む気持ちが、私たちの健康と幸福、調和のとれた状態を維持してくれます。このような目標をもって、Jeanetteさんは20年間、Edu-Kを実行し学んできました。彼女はまた伝統的なホメオパシー医です。イスラエルのファカルティ、取締役会のメンバーとしてインターナショナル・ファカルティも勤めています。

Jeanetteのストーリー
私が初めてブレインジムのコースに参加した時、自分の手の内のすばらしいツールに本能的に気づかせてくれたのは、まだ本当に幼かった頃の体験だったと思います。

子供時代の私は、アイルランドの海辺で岩を飛び越えたり、木登りしたり、泥まんじゅうを作ったり、マットレスで3階から下まで滑り降りたり。。。と、そんなことばかりをしていました。動くことが大好きで、嬉々として動き回っていました。

1987年に初めてブレインジムコースを受講した後は、一度も振り返ることなく、自分の高校の生徒達とブレインジムで教わったことを何年も一緒に使ってきました。その後で独立し、ブレインジムとタッチ・フォー・ヘルスのインストラクターとなり、資格のある伝統的なホメオパシー医として開業しました。ガリラヤの丘にある私の所属するキブツ共同体では、当時このどれもが風変わりな職業として見なされていました。今は変わりましたけれど。

自分の道を歩んできたらブレインジム101からティーチャー・プラクティカムまで核となる全てのコースを教えるインターナショナル・ファカルティとなり、ヴィジョン・サークル・ティーチャー・トレーニング、ダブル・ドゥードゥルのコースも教え、インターナショナル・ファカルティ・リプレゼンタティブとして取締役会のメンバーとなって奉仕していたという具合です。

キブツで16年間教育に携わり、孫達を何人もシュタイナー学校に入学させてきたのですが、ブレインジムとシュタイナー教育のアプローチに多くの相似点を見出し、結果的にはシュタイナーの教育方式に基づく一年間の入門コースを取ることになりました。ブレインジムとシュタイナー教育で受けた影響がひとつとなって、私の「The Playful Child」と名づけたコースになったのです。現在はカナダ、オーストラリア、ドイツ、ギリシャ、イスラエルでこのコースを教えています。

ブレインジムの総会で世界中からやって来るすばらしい人達に出合えることを感謝しています。そこに平和の可能性が見えるからです。つまりこの私を支持してくれる「親愛なる友(ブレインジム)」を完璧に自分のものとし、このようなコースを教えるにつれ、他者も自分も創造的な自己を成長させるためのスペースを開くことになるからです。



◆Ask Daveコーナー (DaveによるQ&Aから)
Q: 私はヴァイオリン教師として首尾よく21年間教えてきました。最近ブレインジム101を受講し、自分のレッスンに取り込むことにしました。それは大ヒットで、生徒達は成果に驚いています。ブレインジム101で習ったことを使うのは合法的でしょうか?それともライセンスを持つ必要があるでしょうか?

A: あなたの音楽教室でブレインジム101のクラスカリキュラム全体を教えるのでないかぎり、習得されたブレインジムをご説明下さった事例のように用いることは許されています。ライセンスが必要になるのはブレインジム101のクラスや、資格をとってその他のブレインジム・クラス、例えばOBO、ヴィジョン・サークルなどを教える場合です。また専門のブレインジム・コンサルタントとして、個人セッションの中で厳密にブレインジム・プログラムを進めていく時にも免許が必要になります。

※なおEDU-K UPDATE 11月号全ての記事を、英文でお読みになりたい方は、次にアクセスしてください。
http://braingym.org/brochures/newsletter/November_2008.html


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ポール・デニソン氏からのメッセージ EDU-K UPDATE 2008年9月号より
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ブレインジムは神経学とは異なり、神経学的な証拠に基づくものではありません。私たちの活動は脳を調整したり変化をもたらしたりすることではなく、ただ特定の意図的な動きをとおして学びを深めるところに主眼を置いています。

1986年にゲイルと私はこの仕事に「ブレインジム」と名付けました。それは私たちの考案した動きが特定の学習能力、つまり知性を育むスキルを獲得する上で支えになるからです。

この仕事が有効であると私たちが確認できるのも、常に感覚や教育上の重要性からであって、脳が活性化されることに関する諸々の情報によってではありません。(1986年当時も今も、この点に関してはようやく知られはじめたばかりというのが現状です。)

子供や大人が「私はカーフ・ポンプが好きなの。気持が落ち着いて楽に話せるようになるから」とか「クロス・クロールをすると、もっと身体を動かして遊びたくなるし、読書も容易になるの」と話してくれるのを聞くと私たちはうれしく思います。でも誰かが「前頭葉を活発にするためにポジティブ・ポイントをします」と言ったりするのをめざしているわけではありません。

ブレインジム101、OBO、その他の教本でも、この点をとても明確に記述しているはずです。科学的な説明は科学者にまかせておきましょう。

先日訪ねたインドネシアで、Elisabeth Demuthと私は、政府の高官と神経科学者にお目にかかる機会を得ました。私たちの活動を説明する上で、話が脳の機能に及ぶところでは、あらためて言うまでもなく神経科学者に委ねるべきであることは明らかです。この会合で神経科学者たちは、私たちのホログラフィックな脳の見方に対して賛同してくれました。つまりダイナミック・ブレイン・モデルによる解釈であり、神経科学者Paul MacLean、Elkonen Goldberg、医学博士John Rateyの仕事から推察したわれわれの見解です。

教育者という立場から、学習能力や行動技能の習得に関して、これまで同様に話し合うことはできるでしょう。また観察できるかぎりにおいて、認識に関わるオーガ二ゼーションやフォーカスする能力が改善されたと述べることもできるでしょう。しかしながら個別の動きが特定の脳領域を活発にするという、私たちが引き出した結論に触れる時は、あくまで仮定としてのみ話すのでなければなりません。

「引き出す」教育モデルとしてのEDU-Kの立場に一貫してとどまるためにも、私たちがブレインジムについて語る時は、肉体の技能、自己を観察する能力、コーディネーション、コミュニケーション、フォーカス、注意力の改善に関わるような領域にとどまりましょう。脳のはたらきの変化に関するどんな結論を述べたところで、私たちにはそれを立証する何の科学的証拠もありません。そのようなコメントは興味深いかもしれませんが、私たちの仕事の有効性とは無関係なのです。

皆さまのご活躍を心よりお祈りしたいと思います。
ポール



◆バックナンバー
  EDU-K UPDATE 2008年8月号